思い出は、ふとした時に掘り起こされる。
忘れたと思っていても、記憶の片隅に残ってはいるものだ。
小さい頃、今は亡き母に買ってもらい、
気に入って止まなかったポシェットもそうだ。
ある日、部屋を片付けていると出てきた。
懐かしい思い出を包んで何十年も大切に保管されていたものだ。
この小さな相棒と出かけた、幼い頃の冒険がよみがえる。
私は一瞬にして、記憶の果てにつれ戻された。
しかし、
結局私はそのポシェットを出品することにした。
もう、手放そう、と思ったんだ・・・
やがて、
売れると、私のもとに購入された方から一件のコメントが届いた。
「懐かしいものをありがとうございます。」
こう綴ってあった。
「この品は、かつて自分が娘たちに買ったのと同じものです。娘たちはとても気に入ってボロボロになるまで使っていました。同じものをまた手にできるなんて。」
ただ不用品を処分するためにやっているメルカリなのに、こんな瞬間、よかった、と胸が熱くなる。
と同時に、こんな風に誰かに喜びを提供できるメルカリの力は凄いとあらためて思った。
メルカリは、今や手に入らないものを買う喜びと、売る喜びを結びつけるのだから。
すーっと潮が引くように、
思い出の、あきらめがついた。